【琵琶の初心者向けガイド】知っておくとちょっと得する琵琶の豆知識ほか解説
アラフィフの方々は、琵琶という楽器から何をイメージされるでしょうか。
耳成芳一のおとぎ話や、歴史で習った盲目の琵琶法師の方々について想い起こすことが多いでしょう。
7~8世紀ごろに中国から日本に伝来し長く愛されてきた琵琶を習おうと思った時、初心者の方が知っておくと役立つ豆知識についてまとめてみました。
【豆知識1】琵琶の種類は実はとても多い
琵琶の歴史は古く、中国、ベトナム、日本など各地に伝えられてそれぞれ発達してきました。
そのため現在の日本には、琵琶が5種類も存在します。
①楽琵琶
雅楽(日本の古典音楽の1つ)のうち管絃(楽器のみの演奏)と催馬楽(平安時代にできた歌曲の1つ)を演奏する時に用いられる琵琶です。
日本初の琵琶として知られ、雅楽の中ではリズム楽器として分散和音を奏でるのが特徴的と言えるでしょう。
②平家琵琶
鎌倉時代から読み継がれる軍記物の名作「平家物語」に節をつけて歌いながら演奏する時に用いられる琵琶です。
この演奏様式を「平曲」と言いますが、現在でも数々の演奏会が開かれています。
③盲僧琵琶
盲目の琵琶奏者である琵琶法師、琵琶法師が奏でた琵琶、琵琶法師が演奏した宗教音楽のことを指します。
楽器としての盲僧琵琶は荒神経、地神経などのお経を唱える時の伴奏として用いられました。
④薩摩琵琶
室町時代に武士の教養のための音楽として生まれ、武士たちの士気向上のため勇壮で大きな音が出るように楽器や撥が改良されていったのです。
武士道や儒教、仏教の教えなどが取り入れられ、西南戦争などの戦いのさなかにも演奏されたと伝えられています。
⑤筑前琵琶
宗教性を脱して明治時代に女性を対象とする家庭音楽として確立しました。
歌と演奏が一体化し調絃なども三味線に準ずるようになったのが特徴的と言えるでしょう。
琵琶は時代の流れの中で演奏者や曲により、さまざまな役割を担ってきた楽器なのだということがわかります。
初心者の方でも、雅楽のような格調高い音楽にばかり使われていたのではなく、庶民的な演奏にも使用された楽器だと知ると少し琵琶に対して親しみがわくのではないでしょうか。
【豆知識2】琵琶各部の名称について
琵琶初心者の方が覚えておきたい楽器各部の名称を表にまとめてみました。
名前 | 意味 |
海老尾(えびお) | 転手がついている部分。海老の尾のような形をしていることからこの名前となった。 |
転手(てんじゅ) | 糸巻のこと。4弦なら4本、5弦なら5本ある。 |
絃(げん) | 弾いて音を鳴らす部分。 |
柱(じ) | ギターで言うフレットのこと。 |
腹板(ふくばん) | 手前側の木のこと。 |
月(つき) | 銀や象牙、柘植などで作った装飾。 |
撥面(ばちめん) | 撥が当たる部分のため、牛や鮫の皮を貼り付けた部分。 |
覆手(ふくじゅ) | 絃を結び付けてある部分。 |
他にも琵琶にはたくさんの名称があるのですが、初心者の方は一度に全て覚えようとせずよく使用する部分から少しずつ覚えておくことをおすすめします。
なお楽琵琶・平家琵琶・薩摩琵琶・筑前琵琶による楽器の各部位の特徴の違いについて興味のある方は次のページも参考にしてみてください。
【豆知識3】琵琶はチューニングの種類が多い
琵琶のチューニングを絃合(おあわせ=雅楽に使う楽器をチューニングすることを意味する)と言いますが、西洋の弦楽器のように一定ではなく楽曲によって変更するという考え方です。
絃合とは転手で絃を緩めたり締めたりして音程を合わせることです。
絃は張っただけでは正しい音程にはなっていないため、全ての弦楽器は演奏前にこのチューニングを行って楽器ごとに正しい音程に調整する必要があります。
絃の名前は太い順に一絃、二絃、三絃、四絃と数字が振ってありますが、絃合の種類とそれぞれの絃が合わせる音を一覧表にまとめてみました。
壱越調 | 平調 | 双調 | 黄鐘調 | 水調 | 盤渉調 | 太食調 | |
一絃 | 黄鐘 A2 ラ | 平調 E2 ミ | 双調 G2 ソ | 黄鐘 A2 ラ | 黄鐘 A2 ラ | 下無 F#2 ファ♯ | 平調 E2 ミ |
二絃 | 壱越 D3 レ | 盤渉 B2 シ | 黄鐘 A2 ラ | 神仙 C3 ド | 盤渉 B2 シ | 盤渉 B2 シ | 盤渉 B2 シ |
三絃 | 平調 E3 ミ | 平調 E3 ミ | 壱越 D3 レ | 平調 E3 ミ | 平調 E3 ミ | 平調 E3 ミ | 平調 E3 ミ |
四絃 | 黄鐘 A3 ラ | 黄鐘 A3 ラ | 双調 G3 ソ | 黄鐘 A3 ラ | 黄鐘 A3 ラ | 黄鐘 A3 ラ | 黄鐘 A3 ラ |
※A3とA2は同じラの音ですが1オクターブの音程差があります。
次に絃は締めると音程が上がり、緩めると音程が下がるということを覚えましょう。
これを踏まえて、チューナーという音程を合わせるために現在の楽器の音程を表示してくれる機械を用いて絃合を行ってみます。
最初に一絃をどこも押さえずに(開放弦という)鳴らしましょう。
チューナーの針が真ん中より左側を指している場合は音程が低いということなので、転手で絃を締め針がちょうど真ん中になるように調整します。
またチューナーの針が真ん中より右側を指している場合は音程が高いため、一旦真ん中よりも針が左側になるところまで絃を緩め、そこから再度締めることで針が真ん中にくるように調整しましょう。
転手を締めることで音程を最終的に合わせるようにするのは、音程を狂いにくくするためです。
これを一弦から四弦まで4回行えば、絃合は完了です。
初心者の方には転手を締める加減やチューナーの針を真ん中にするように合わせるのはなかなか難しいことですが、少しずつ慣れていきましょう。
【豆知識4】琵琶の楽器の価格相場について
琵琶という楽器の価格相場は和楽器の中でもかなり高価格と言えます。
新品であれば80万円~130万円、初心者用の普及品でも40万円といったところでしょうか。
この価格では琵琶を始めることすら困難と感じてしまいそうなのでオークションで検索してみると、10万円~20万円ほどの楽器も存在します。
しかし、このような中古品は初心者の方には状態の見極めが難しく、決して安い金額ではないのにジャンク品のような状態である可能性も0とは言えないでしょう。
何か抜け道はないものかと調べてみると、わずかではありますが琵琶教室や楽器店で琵琶をレンタルしているところが存在します。
レンタルの琵琶であれば初心者の方でも状態の良くない楽器を手渡されるといったことはあまり考えられませんし、月額費用を支払うことができれば長く練習にも使うことができるでしょう。
楽器にかかる費用があまりに高いので琵琶をあきらめかけていた初心者の方も、ぜひ一度はレンタルを検討してみてはいかがでしょうか。
【豆知識5】琵琶の譜面について
琵琶は歴史の古い楽器のため、さまざまな楽譜の種類が存在します。
その中でもよく使用されるのが「語りの楽譜」と「弾法譜」を組み合わせて使う方法と言えるでしょう。
語りの楽譜とは例えば平家物語を弾き語りする場合、ストーリーを示す文章、文章ごとの音程を示した番号、語尾の節回しが記載されている楽譜です。
所々に「二番」のような指示があり、これは「二番」と名付けられた旋律(メロディーのこと)を当てはめて演奏します。
他にも「白菊」や「桜」といった草花の名前の指示もあるのです。
これらの指示のことを「手」と呼びます。
この手は1つ1つどのような旋律なのかをまとめた譜面があり、それが「弾法譜(だんぽうふ)」です。
弾法譜は琵琶におけるTAB譜(楽器の弦に押さえるフレットを数字で表記することで弾き方を示す楽譜の種類)のような記譜法を用いていて、絃を示す線の上に指で押さえる箇所、弾き方や指使いが表記されています。
音の長さや小節を表す記号がないのが特徴的と言えるでしょう。
琵琶ではこのようにまず語りの楽譜を見て文章を把握し、所々に記載されている「手」を弾法譜で確認することで1つの曲が演奏できるということです。
しかし2種類の楽譜を照らし合わせながら演奏するというのはプロの先生でもなかなか手間のかかる作業です。
そのため近年はこの2つを1枚で表現した新しい記譜法も用いられるようになってきました。
琵琶の初心者の方にとってはこの楽譜があることでかなり敷居が低くなったと言えるのではないでしょうか。
まとめ
アラフィフの方が琵琶を習いたいと感じた時に知っておくと役立つ豆知識を並べてみましたが、音楽教室で習うことができる楽器の中では価格的にも知識的にもかなり敷居の高い楽器であることがわかりました。
しかし時間やお金の余裕もある程度できてきて、本当に自分のやりたいことを見つめ直した方にとってはこの敷居の高さが逆に魅力と感じる部分もあるのではないでしょうか。
楽器演奏を趣味としたい人にとっては、費用がある程度かかるというのは織り込み済みのことでしょう。
そのためあとはその高い費用をかけて自分の心が満足するかどうか、長く趣味として続けることで幸せを感じることができるかどうかを考えることが重要と言えます。
判断に迷うなら、ひとまず音楽教室の無料体験レッスンをいくつか受講してみるのもよいでしょう。
琵琶という素敵な楽器を知ったなら、ぜひそれに触れる機会を大切にしてみてください。
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